庵の人々_01_Every Little Thing

2015年4月、タンポポの綿毛がふわふわ飛ぶ頃、東京都大田区の河川敷、雨よけを加味して橋の下に建ててある庵。Kさんは気さくでよく喋るタイプ。北海道出身で55歳、ここに住んで1年、タバコはメビウスの10mmロングを吸う。酒は飲まずコーラが好き。ケンちゃんと呼んでいいよと言われた。

 

廃品回収に精を出しており、機械いじりが好きなようで、庵自体が小さな工房のようになっている。「こんなもの拾ってきた」と、どんどん自分が集めたものを紹介してくる。「カメラやっているんだったらこれどうだ?これもまだ使えるだろ?俺使わねえから。」と勧めてくるので、私はほぼ新品のチェキ1台と、電子辞書をもらってしまった。

 

驚いたのは、発電機3台とストーブ3台を持っていたことだ。夏は発電機を使ってダクトから庵の中にクーラーを効かせているらしい。軽く衝撃が走った。今まで結構な人数を取材してきたが、どの人も夏の炎天下の河川敷、蒸し風呂のようになる庵の暑さに苦しめられていた。まさか冷房をつけている人がいたとは。上には上がいる。固定観念は打ち砕かれる。

 

庵の中を見せてもらう。そこかしこに、私にはガラクタにしか見えないのだが、様々な機械部品が転がっている。Kさんは、「良いコンポを拾ってきた」と言い、スイッチを押すと、突如爆音で音楽が流れ出した。「音質が良いんだよ」と言い、音量をさらに大きくする。「ちょっと音大きすぎませんか!?」私の方が周りを気にして焦ってしまった。静かな河川敷でごちゃごちゃと家電製品に囲まれ、大の男2人が狭いところ、ELTのFor The Momentを爆音で聴いている。

 

“これほどにひとを好きになること今までなかったから
潤してほしい この熱い身体 ずっと抱き締めていて”

 

この上なくあっけらかんと、場違いな歌詞が鮮烈に耳に入ってくるのであった。

東京都大田区 2015

東京都大田区 2015

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