2010年3月のある真昼、Sさん(元ホームレスで現在は生活保護受給で寮住まい)と新宿駅西口で待ち合わせた。都内の生活保護受給者は都営電鉄と都営バスはタダなんだと、持っていた定期券を見せてくれた。
ポカポカした陽気の中、いつもの場所(小田急デパート入口前の路上)で共に缶ビールを飲んでいるとSさんは言った。
「双子のホームレスがいるんだよ。」
戸山公園に住んでいると言うので、会いに行こうということでブラブラと歩き出した。
現在は一掃されてしまって跡形もなく綺麗になってしまったが、その当時は新宿中央公園や戸山公園には多くのブルーシートテント・庵があり、特に戸山公園の方には堂々と、明らかに公園内の目立つ場所に群のようにあり、異彩を放っていた。そのすぐ横で、子供達が元気に遊びまわっていたり、学生がサックスの練習をしていた。
Tさんは物静かな双子の兄弟で、ともに日雇いの土方をしていた。宝焼酎が好きなようである。荷物は公園内の樹木の横にまとめてあるが、住む庵はなく、夜は2人で芝生にそのままきちんと布団を敷いて寝ている。双子の兄の方は腰を痛めているようで最近休みがちで、弟が稼ぎに行っている。兄弟助け合っているようだった。
写真を撮らせてもらい、後日プリントして渡した。
着ている服も、靴まで同じだろうかそっくりである。兄は髪を後ろに束ねており、体の不調のこともあろうか若干痩せている。手には帽子を持っている。
弟は新聞を持っている。
双子に惹かれる写真家は多い。ダイアン・アーバスや牛腸茂雄が双子を撮った写真は、写真をやっている人なら誰もが知っているであろうほど有名な作品であるが、一体何がそうさせるのか。
何だかまだうまく言えない、
写真と双子の関係性についてもう少し考えてみる必要があるのかもしれないなと思った。何かそういう引力みたいなものが此処には存在しているようだとふと思った。
東京都新宿区 2010